貨物運送業
貨物船事業について
海上(湖・沼・河川を含む)において船舶による貨物の運送をする事業を行う場合は、運送する区間等により適用される法令が異なります。
内航海運業法 | 日本国内の港と港、港と港外などの区間における船舶による貨物運送 |
港湾運送事業法 | 日本国内の港湾(港湾運送事業法施行令の指定港湾及び港則法に基づく港)内または港湾運送事業法施行規則で指定する区間における船舶による貨物運送 |
海上運送法 | 日本と国外または国外のみの、港と港、港と港外などの区間における船舶による貨物運送 |
ここでは、「内航海運業法」に基づく貨物運送事業について概説します。
「内航運送」と「内航海運業」について
内航運送 | 船舶による海上における物品の運送で、船積港、陸揚港のいずれもが日本国内にあるものをいう。
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内航海運業 | 海上運送法に規定する旅客定期航路事業および旅客不定期航路事業、港湾運送法に規定する港湾運送事業(相当する事業を含む。)を除き、内航運送をする事業または内航運送の用に供される船舶の貸渡しをする事業をいう。
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手続き区分
① 登録
総トン数100トン以上または長さ30メートル以上の船舶
② 届出
総トン数100トン未満かつ長さ30メートル未満の船舶
内航海運業の事業形態について
内航海運業には二つの形態があります。
① 内航運送をする事業
荷主からの依頼に応じ、自己所有または他の内航海運業者から借り受けた船舶により、貨物運送を実施する事業です。
荷主から「運賃」を収受し、船舶借受け先には用船料を支払います。
運航を管理することから、「オペレーター」と呼ばれます。
② 船舶の貸渡しをする事業
他の内航海運業者に対し、自己所有または他の内航海運業者から借り受けた船舶を貸渡し、最終的にオペレーターの下で貨物運送に従事させる事業です。
船舶貸渡先からは用船料を収受し、借受船舶に対し当該用船料を支払います。
「オペレーター」に対する用語として、「オーナー」と呼ばれます。
③ 船舶の管理をする事業
委託、用船などの契約の種類に関わらず、他人の所有する船舶に船員を乗り組ませ、当該船舶の点検、整備並びに航海を行う事業です。
オペレーター (船舶運航者) | 荷主と直接取引によって運送契約を結び、荷主から依頼された貨物の輸送を行う 使用する船舶は、自社船のほか、船舶所有者(オーナー)から用船(チャーター)した船舶である。 |
オーナー (船舶所有者) | 内航運送に供される船舶の貸渡しを行う業種。 自社船をオペレーターに用船に出し、自らは運航しない。 オペレーターと用船契約を結び、対価として用船料を収受する。 |
船舶管理業者 | 他人の需要に応じ、船員を雇用・配乗し、当該船舶を通じて 船舶の保守管理並びに運航実施管理を行う。 |
海上運送における主な契約形態について
個品運送契約 | 運送費を積載する船舶の船腹を契約で特定せず、個々の運送品の運送を約定する契約 |
航海用船契約 | 特定の区域間の海上物品運送を目的とした運送契約。 いわゆる連続航海用船契約を含む。 |
定期用船契約 | 船員を配乗した船舶を、一定の期間定額で貸渡す契約 |
裸用船契約 | 船員を配乗せず、船舶だけの賃貸借契約 |
運航委託契約 | 委託者が受託者に対して航海供用に関し一切の手配ないし総括的な委託をし、受託者が自己の名および委託者の計算で船舶を航海の用に供することを約定した契約 |
船舶管理業者 | 他人の需要に応じ、船員を雇用・配乗し、当該船舶を通じて 船舶の保守管理並びに運航実施管理を行う。 |
貨物運送における運航形態の分類について
船舶の運航形態は、自己の所有船を自ら運航する「自営」が基本となります。
自営
オーナーが船員を配乗し、自ら運航(オペレーション)する。
「船体の保有および保守」、「船員の配乗」、「配船」、「運航の実施」等運航にかかる一切の行為を自らの責任において行うのが、「自営」による運航です。
自営運航のほかに、他者の船舶を用船(借受け/貸渡し)する場合があります。
用船の形態には、「航海用船」「定期用船」「裸用船」「運航委託」などがありますが、内航海運業法においては「定期用船」「裸用船」「運航委託」の三種に大別されています。
定期用船
オーナーが船員を配乗し、オペレーターに貸渡する。
「定期用船」とは、オーナーが船員を配乗し、稼動可能な状態で期間を定めてオペレーターに貸渡し、オペレーターの運航指示に従い運航する用船方式です。
オペレーターからオーナーへは、用船期間に応じた定期用船料が支払われますが、燃料費や港費など運航回数に応じて変動する費用は、原則として定期用船料には含まれず、オペレーターが別途当該費用を負担します。
裸用船
オーナーは船体のみ貸渡し、オペレーターが船員を配乗する。
「裸用船」とは、オーナーは船員を配乗せず、船体のみを期間を定めてオペレーター等に貸渡し、オペレーター等は借受けた船舶に船員配乗したうえで、運航する用船方式です。
オペレーター等からオーナーへ、用船期間に応じた裸用船料が支払われます。
運航委託
オーナーが船員を配乗し、オペレーターに貸渡す。(運航を委託)
「運航委託」とは、オーナーが船員を配乗し、稼動可能な状態で、期間を定めてオペレーターに貸渡す点では、定期用船と同様ですが、その名のとおり運航(オペレーション)を委託するものなので、定期用船とは異なり、航海ごとに生ずる運賃をオーナーが収受し、オペレーターには所定の比率で委託手数料を支払うこととなります。
基本的に航海ごとの計算とし、運賃には運航費用の一切が含まれるため、オペレーターが燃料費等の変動費用を負担することはありません。
また、他の使用船舶との間で格差が生じないよう、「善管注意の下、有利運航に努める」旨の条項を設けることが標準とされており、商慣習上、月間最低保証料を定めるケースが多く見受けられます。
船舶管理
オーナーの要請に応じ、船舶管理業者が船員を雇用・配乗し、当該船舶の点検、整備並びに航海を行う。
「船舶管理」とは、契約の形態等に関わらずオーナーからの要請に応じて、オーナーが所有する船舶について、船舶管理事業者が船員の配乗(雇用)、当該船舶の点検及び整備、並びに運航等を行うものです。
具体的には船舶管理会社や裸用船業者などが該当します。これらの船舶管理事業者はオーナーより管理料や裸用船料などの名目で、収益を受領します。
- 事業のスキームの詳細については、お近くの海事代理士にご相談ください。
内航運送から除外されるもの
次の船舶を使用して運送を行う場合は、内航運送として取り扱われません。
- 物品を単に廃棄することを目的とした運送のみに使用する船舶
ただし、埋立地への物品の投廃棄は、「単に廃棄する」には該当しません。 - 油送船以外の船舶であって、港内のみを運航するもの
ただし、他人の需要に応じて運送を行う場合は、「港湾運送事業」の対象となります。 - 起重機船、浚渫船、海底電線敷設船、油回収船(流失油を回収する船舶)、オイルフェンス展張船、設標船等、海上作業を目的とする船舶がその本来目的のために付随的に行う物品の運送
- 曳船および押船が、はしけ、台船、いかだ、フローター、ケーソン、タンク、起重機船、浚渫船、解撤船等を曳航または押航する場合は、いずれも内航運送として取り扱われます。
- 本船離接岸、水先案内および海難救助のための曳航または押航並びに土木建設に使用する作業船等の港内移動のための曳航または押航は、内航運送として取り扱われません。
- 内航運送の該当の有無ついては、お近くの海事代理士にご相談ください。
自家用船舶について
内航海運業の用に供する以外の船舶であって、総トン数100トン以上または長さ30メートル以上のものが以下の要件を満足する場合は、「自家用船舶」として届け出ることで、内航運送の用に供することができます。
- 当該船舶が、届出者の自己所有船舶であること。
- 共有船舶は、認められません。
- 荷主が所有する船舶を貸渡し、かつ、再用船して自家用貨物輸送に使用する場合は内航海運業の対象となるため、認められません。
- 届出者が、当該船舶に配乗するために自己雇用船員を有すること。
- 船舶管理契約など他者の雇用船員を配乗することは認められません。
- 当該船舶による運送が、他人の需要に応ずるものでないこと。
- 自家用船舶の詳細については、お近くの海事代理士にご相談ください。
内航海運業の手続きについて
1.登録申請 (総トン数100トン以上又は長さ30m以上の船舶を有する事業者)
①内航運送をする事業 (オペレーター/船舶運航者) | 主たる営業所の所在地を管轄する地方運輸局に申請する。 <登録事項> イ.申請者の情報 ロ.営業所の名称及び位置 ハ.使用する船舶の明細 ニ.貸渡し先の情報 ※船舶の貸渡しをする事業を行なう場合 ホ.管理先の情報 ※船舶の管理をする事業を行なう場合 へ.運航に関する情報 ※内航貨物定期航路事業を行なう場合 ト.加入している海運組合の名称 ※加入している場合 チ.登録年月日及び登録番号 |
②内航運送船舶の貸渡しをする事業 (オーナー/船舶所有者) | |
③内航運送船舶の管理をする事業 (船舶管理業) |
2.変更登録申請と軽微変更届出
①登録事項のうち変更登録申請が必要とされる事項 | イ.使用船舶の増加 ロ.使用船舶の減少 ハ.使用船舶に関する変更 二.事業変更 |
②登録事項のうち軽微変更届出が必要とされる事項 | イ.社名等の変更 ロ.貸渡先・借受先・管理先関係の変更 ハ.運送形態の変更 ニ.事業追加 |
③事業の休止及び廃止 | 登録事業者が、船舶の売却など使用(所有)船舶の減少に伴い事業を休止する場合は、変更登録申請書に使用船舶の減少に係る書類を添付し、同時に事業休止届出書を提出する。 使用船舶がなくなった場合等内航海運業を営むことができなくなった場合、事業廃止届出書を提出する。 |
④新造(改造)船完成報告 | 変更登録申請後、当該船舶が完成した際に完成報告書と添付書類を提出する。 |
3.届出(総トン数100トン未満且つ長さ30m未満の船舶を所有)
内航運送をする事業 (オペレーター/船舶運航者) | 事業開始届出書、申請者(事業者)の事業概要、事業計画及び添付書類を揃えて、原則として、申請者(事業者)の所在地を管轄する地方運輸局に提出する。 <届出事項> イ.申請者の情報(氏名又は名称、住所並びに法人代表者名) ロ.営業所の名称及び位置 ハ.使用する船舶の明細 ニ.貸渡し先の情報 ※船舶の貸渡しをする事業を行なう場合 ホ.運航に関する情報 ※内航貨物定期航路事業を行なう場合 へ.事業開始年月日 |
内航運送船舶の貸渡しをする事業 (オーナー/船舶所有者) | |
内航運送船舶の管理をする事業 (船舶管理業) |
4.届出事項変更届出
①事業開始届出により届出される事項 | イ.申請者の情報(氏名又は名称、住所並びに法人代表者名) ロ.営業所の名称及び位置 ハ.使用する船舶の明細 ニ.貸渡し先の情報 ※船舶の貸渡しをする事業を行なう場合 ホ.運航に関する情報 ※内航貨物定期航路事業を行なう場合 ヘ.届出年月日及び届出番号 |
②事業の休止及び廃止 | 届出事業者が、船舶の売却など使用(所有)船舶の減少に伴い事業を休止する場合は、届出事項変更届出書に使用船舶の減少に係る書類を添付し、同時に事業休止届出書を提出する。 使用船舶がなくなった場合等内航海運業を営むことができなくなった場合、事業廃止届出書を提出する。 |
5.内航海運事業者の地位承継の届出
①届出が必要な場合 | イ.内航海運事業者から、事業の譲渡・譲受があったとき。 ロ.内航海運事業者(個人)が死亡し、相続人が事業を相続したとき。 ハ.内航海運事業者である法人が合併し、合併後存続する法人又は合併により設立された法人が事業を承継したとき。 ニ.内航海運事業者である法人が分割し、分割後設立する法人又は他の事業者に事業を承継したとき。 |
②届出書及び添付書類 | 地位承継届出書、添付書類を揃えて、原則として、申請者(事業者)の所在地を管轄する地方運輸局に提出する。 |
6.自家用船舶の届出 (総トン数100トン以上又は長さ30m以上の船舶を所有)
①自家用船舶使用届出が必要な場合 | 内航海運業の用に供する船舶以外の船舶であって、総トン数100トン以上又は長さ30m以上のものを、内航運送の用に供しようとするときで、且つ、自家用船舶の要件を具備するとき。 |
②届出書の提出時期 | 内航運送の用に供しようとするときは、あらかじめ届出ること。特に、自家用船舶を建造し、又は、使用する場合は、建造着手前又は使用計画段階で届出ること。 |
③届出書及び添付書類 | 自家用船舶使用届出書、添付書類を揃えて、申請者(事業者)の所在地を管轄する地方運輸局に提出する。 |
④変更の届出が必要な場合 | 自家用船舶使用届出により届け出た内容に変更が生じたとき |
⑤変更届出書の提出時期 | 届け出た内容を変更するときは、あらかじめ届出ること。 |
⑥変更届出書及び添付書類 | 自家用船舶使用届出事項変更届出書、添付書類を揃えて、申請者(事業者)の所在地を管轄する地方運輸局に提出する。 |
⑦船舶使用廃止の届出 | イ.自家用船舶使用届出により届け出た船舶を、内航運送の用に供しなくなった場合は、その日から30日以内に廃止の届出を行なう。 ロ.自家用船舶使用廃止届出書、自家用船舶届出受理書を揃えて、申請者(事業者)の所在地を管轄する地方運輸局に提出する。 |
- 内航海運業の手続きの詳細については、お近くの海事代理士にご相談ください。