海事代理士倫理要綱(一般社団法人日本海事代理士会制定)

 海事代理士の使命は、国民の権利の擁護と公正な社会の実現の達成に努め、国民生活の質的向上と日本経済の発展に寄与することにある。その使命を果たすための基本姿勢を、海事代理士倫理として、ここに制定する。

第1章 綱 領

(誠実公正)
第1条 海事代理士は、その使命を自覚し、常に良心に恥じぬよう誠実かつ公正に職務を行う。

(品位の保持)
第2条 海事代理士は、常に人格の陶冶に励み、教養を高め、品位の保持に努める。

(自覚と涵養)
第3条 海事代理士は、職責を自覚し、専門知識を涵養し、法令と職務に精通する。

(社会貢献)
第4条 海事代理士は、積極的に公益活動を行い、国民の生活向上と社会の発展に貢献する。

第2章 一般的規律

(説明および助言)
第5条 海事代理士は、依頼者の真意を把握し、その依頼の趣旨を実現するために、的確な法律判断と良識に基づき、説明責任を果たし、かつ助言をしなければならない。

(秘密保持)
第6条 海事代理士は、職務上知り得た秘密を保持しなければならず、また利用してはならない。海事代理士でなくなった後も同様とする。

(職務外の権限行使)
第7条 海事代理士は、職務上の権限を職務以外の目的に行使してはならない。

(他の事業への関与)
第8条 海事代理士は、職務の公正または品位を損なうおそれのある事業を営み、若しくはこれに加わり、またはこれに自己の名義を利用させてはならない。

(不当誘致)
第9条 海事代理士は、不当な手段で、依頼を誘致し、誘発してはならない。

(名義貸し)
第10条 海事代理士は、第三者に自己の名で海事代理士業務を行わせてはならない。また、法令の違反者と提携してはならず、これらの者から依頼のあっせんを受けてはならない。

(違法行為の助長等)
第11条 海事代理士は、違法若しくは不正な行為を助長し、またはこれらの行為を利用してはならない。

(広告宣伝)
第12条 海事代理士が広告宣伝を行う場合には、品位の保持に留意し、不当な目的を意図してはならない。

(従事者への指導監督)
第13条 海事代理士は、事務に従事する者をしてその職務を包括的に処理させてはならず、常にその者の指導監督を行い、海事代理士倫理を周知徹底させなければならない。
2 海事代理士は、その事務に従事する者に対し、その者が職務上知り得た秘密を保持させなければならず、また利用させてはならない。その者が事務に従事する者でなくなった後も同様とする。

第3章 依頼者との関係における規律

(受任義務)
第14条 海事代理士は、正当な事由がある場合を除き、依頼を拒むことができない。依頼を拒むときは、正当な事由を説明し、請求があるときは、その事由を記載した文書を依頼者に交付しなければならない。

(受任の趣旨の明確化)
第15条 海事代理士は、依頼の趣旨の内容及び範囲を明確にして、事件を受任しなければならない。また、委任を受けた事項について、依頼者の利益を守らなければならない。

(不正疑惑事件)
第16条 海事代理士は、依頼の趣旨が、その目的、手段または方法において不正の疑いのある場合には、事件を受任してはならない。

(権利関係等の把握)
第17条 海事代理士は、登記手続を受任した場合には、当事者およびその意思並びに目的物の確認等を通じて、実体的権利関係を的確に把握しなければならない。
2 海事代理士は、犯罪収益移転防止法の「特定事業者」同様に、前項の確認を行った書面を作成するように努めなければならない。

(報酬額の明示)
第18条 海事代理士は、事件の受任に際して、その適正妥当な報酬および費用の金額または算定方法を依頼者に明示し、かつ、十分に説明しなければならない。

(事件の処理)
第19条 海事代理士は、受任した事件を遅滞なく処理しなければならない。
2 海事代理士は、依頼者に対し、事件の経過と重要事項を必要に応じて報告し、事件が終了したときは、遅滞なくその経過と結果を報告しなければならない。

(預り書類等の管理)
第20条 海事代理士は、事件に関する書類等を、善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。

(預り金の管理等)
第21条 海事代理士は、職務上、預り金を受領したときには、自己の金員と区別して管理しなければならない。
2 海事代理士は、依頼者のために依頼者以外の者から金品を受領した場合には、速やかにその事実を依頼者に報告しなければならない。

(事件の中止)
第22条 海事代理士は、受任した事件の処理を継続することができなくなった場合には、依頼者の損害が最小限になるように、事案に応じた適切な処置をとらなければならない。

(記録の備付及び保存)
第23条 海事代理士は、その業務に関する記録を備え、これに受任した事件の概要、金品の授受その他特に留意すべき事項等について記録を作成しなければならない。
2 海事代理士は、前項の記録をその関係書類とともに、記録閉鎖のときから3年間保存しなければならない。海事代理士でなくなったときもまた同様とする。

(依頼者との金銭貸借等)
第24条 海事代理士は、正当な事由なく、依頼者と金銭の貸借をし、または保証等をさせ、あるいは保証をしてはならない。

第4章 他の海事代理士及び海事代理士会との関係における規律

(規律の遵守)
第25条 海事代理士は、法及び法に基づく命令並びに社団法人日本海事代理士会(以下「代理士会」という。)が定める規律を遵守しなければならない。

(誹膀中傷等の禁止)
第26条 海事代理士は、他の海事代理士または代理士会を誹諧中傷する等、信義に反する行為をしてはならない。

(自治の確立)
第27条 海事代理士は、自立と自律の精神に則り、常に自治の確立に努め、代理士会の組織運営に積極的に協力しなければならない。

(事業への参加)
第28条 海事代理士は、代理士会が行う事業に積極的に参加し、また、委嘱された事項を誠実に遂行しなければならない。

(資質の向上)
第29条 海事代理士は、常に自ら研鑽するとともに、代理士会が行う研修に参加し、その資質の向上に努めなければならない。

(紛議の円満解決)
第30条 海事代理士は、業務に関し紛議が生じた場合には、自主的かつ円満な協議により解決するように努めなければならない。

第5章 職務に関する規律

(法令遵守の助言)
第31条 海事代理士は、依頼者または相談者に対して、法令を遵守するように助言しなければならない。

(業務の規律)
第32条 海事代理士は、国民の利便に資するため、真正な書類を作成し、行政に関する手続の円滑な実施に寄与しなければならない。

(相手方等からの利益授受)
第33条 海事代理士は、受任した事件に関し、相手方又は相手方代理人等から利益の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくはその約束をしてはならない。
2 海事代理士は、受任した事件に関し、相手方又は相手方代理人等に対し、利益の供与若しくは供応をし、又はその約束をしてはならない。

(相手方本人との直接交渉)
第34条 海事代理士は、受任した事件に関し、相手方に代理人がないときは、その無知又は誤解に乗じて不当に不利益に陥れてはならない。
2 海事代理士は、受任した事件に関し、相手方に代理人があるときは、特別な事情がない限り、その代理人の了承を得ないで相手方本人と直接交渉してはならない。

第6章 雑 則

(職務上請求用紙の取扱)
第35条 「戸籍謄本住民票の写し等職務上請求書」の取扱に関しては、別途定める「職務上請求の適正な使用及び取扱に関する規定則」に従うものとする。

(要綱の改廃)
第36条 この要綱の改廃は、理事会の決議を経て、総会の承認を得て行う。

附 則

  1. この要綱は、平成19年6月2日から施行する。
  2. この要綱は、平成21年6月5日改正施行するものとする。
  3. この要綱は、平成23年6月25日改正施行するものとする。