船員の手続き

船員手帳

 船員の身分および雇用契約が適正かつ有効に成立したことを証明するものであり、氏名、本籍、生年月日の他、雇入契約事項、休日、船員の乗船履歴、保険、健康証明等が記載されており、船舶の安全な運航を人的に担保する目的も果たしています。 日本人の場合、有効期間は10年です。 →詳しくはこちら

 最寄りの地方運輸局、運輸支局(海事事務所を含む。)又は船員法の指定市町村で取得できます。

 船員は船員手帳の受有が義務付けされています。(船員法第50条)

 外国人でも取得できます。
 日本船舶に乗組む船員は外国人であっても船員手帳を受有する義務があります。 外国人が受有する船員手帳は身分不証明で、有効期間は5年です。

 船員の健康診断を行い証明できるのは国土交通大臣の指定する医師(指定医)で受診できます。 →全国の指定医一覧
 健康証明の有効期限は原則として1年(色覚の検査については6年)です。検査を受けてから3か月以内に健康検査合格標準表に合格した旨の判定を受けなければ、船員として就労できません。指定医以外の医師による診断では乗船できません。

 有効期間満了日の1年前から更新できます。

 変更したことが分かる書類(戸籍謄(抄)本、本籍地記載の住民票)と船員手帳をもって、最寄りの地方運輸局、運輸支局(海事事務所を含む。)又は船員法の指定市町村で訂正できます。
 本人の出頭は必要ありません。  

 再交付の手続きが必要です。
 必要書類等に関する質問は、お近くの海事代理士にお問い合わせください。

雇入契約の届出

 会社が船員を雇用する場合に雇入契約書を締結いたします。その後船舶に乗船する場合は、運輸局及び指定市町村に雇入契約の届出をしなければなりません。 →詳しくはこちら

 原則、船員の乗下船のたびに届出なければなりません。しかし、同じ船舶所有者で航海の態様が類似し、労働条件が同等であれば、複数の船舶相互間において一定の条件を満たせば、一括届出の許可を受けることにより、当該複数の船舶に乗下船するたびに届出をする必要がなくなります。

 全国の管海官庁(運輸局、運輸支局、海事事務所)及び指定市町村

 雇入契約の届出に必要な書類は、雇入(雇止)届出書、雇入契約変更(更新)届出書、海員名簿第6表(通称クルーリスト(新旧))、海員名簿、海技免状、各種資格証明書、船員手帳、認印、雇入契約契約書の写し、船員保険・労災保険・雇用保険の加入証明書等です。詳しくは、お近くの海事代理士にお問い合わせください。

 原則は船長が届出ることになっていますが、全員を雇止する場合等やむを得ない場合は船舶所有者が行います。依頼を受けて海事代理士が届出ることもできます。

就業規則

 船員の給料や労働時間などの労働条件に関すること、船内の規律などについて船員法に基づき定めた規則集であり、労使間の合意の下で作成されます。
 労働に関するルールを定め、労使双方がそれを守ることで船員が安心して働くことができ、労使間の無用のトラブルを防ぐことができるので、船員就業規則の役割は重要です。
 そのため、法律が求める最低限の記載事項である絶対的必要記載事項だけではなく、会社の定める相対的必要記載事項も就業規則に記載しておくことが望ましいとされています。 →詳しくはこちら

 船員就業規則に定める事項は法律で定められた絶対的必要記載事項の他、船舶所有者が定めた場合に届出なければならない事項があります。 →詳しくはこちら

 常時10人以上の船員を使用する船舶所有者は就業規則を作成し国土交通大臣に届出なければなりません。
 船員派遣事業者は使用する船員が10人以下であっても就業規則を作成し国土交通大臣に届出なければなりません。
 常時使用する船員が10人以下であっても任意で届出ることができます。  →詳しくはこちら

 船員法に則った変更であればできますが、労使間の合意が必要です。
 就業規則を変更した場合は、船員法第98条による意見書を添付して国土交通大臣に届出なければなりません。  →詳しくはお近くの海事代理士にお問い合わせください。

 届出をした就業規則は船内及びその他の事業場内に掲示又は備え置き、常時船員が閲覧できる状態にしておかなければなりません。

 船内苦情処理手順書に従い苦情受理者に申し出てください。
 手順書等が不明な場合は地方運輸局等の運航労務監理官(船員労務官)に相談してください。

航行報告

 自船に海難が発生したとき、他船を救助したときなど、航行に関する報告を船長に義務付けています。(船員法第19条及び船員法施行規則第14条に係る届出手続です。)    →詳しくはこちら   

 主に衝突、乗揚、沈没、滅失、火災、機関の損傷等です。またこれら以外の事項であっても、任意に報告することは差し支えありません。→詳しくはこちら  

 はい、外国語での報告も認められます。英語以外の報告書は、翻訳者を明らかにした日本語または英語の訳文添付が必要です。

 報告書は原則船長名で行わなければなりませんが、出頭する者は報告者(船長または船舶所有者)でなくても認められます。機関に関する報告事項の場合には、機関長に関する事項を記載しなければなりません。報告書は3通提出しなければならず、更に証明書を請求するときはその請求する通数提出しなければなりません。

 船員法施行規則第14条には「遅滞なく」と記されていますので、速やかな報告が望まれます。

 全国の管海官庁(運輸局、運輸支局、海事事務所)及び指定市町村

職業安定法

 求職(求人)の申込みは、全国にある運輸局等の船員職業安定業務窓口、もしくは民間の船員職業紹介機関へ求職票(求人票)を提出して行います。
 また求職者が直接求人情報を検索・閲覧できるシステム「船員求人情報 ネット」をSECOJ〔(公財)日本船員福利雇用センター〕で行っています。
 「船員求人情報ネット」は→こちらから

 船員派遣事業を行おうとする場合は、申請書類等を事業主の主たる事務所を管轄する地方運輸局(事業主管轄運輸局)を経由して国土交通大臣に提出します。
 許可は、国土交通省における審査、実地調査等や交通政策審議会の意見聴取を経て行われますので、許可申請は十分な時間的余裕を持って行う必要があります。
 船員派遣事業の許可申請には様々な申請書類等の作成に加えて、事前に、許可基準や要件を充足する為の準備が必要となります。具体的な申請手続きに関しては、お近くの海事代理士にお問い合わせください。

 労働者派遣法の派遣事業許可では船員を派遣することはできません。(参考:労働者派遣法第3条により船員は同法の適用除外)
 船員派遣事業を行うためには、国土交通大臣の許可が必要です。(船員職業安定法第55条)

 船員派遣事業の許可の有効期間は3年です。許可有効期間更新申請は、許可の有効期間が満了する30日前までに十分な余裕を持って、事業主管轄運輸局へ書類等を提出して行う必要があります。更新後の許可の有効期間は5年です。

 事業者・事業所の名称や住所、代表者や役員の変更(氏名や住所の変更を含む)、派遣元責任者の変更(氏名や住所の変更を含む)などの場合には、許可証書の書換申請(事業者・事業所の名称や住所変更の場合)や変更の届出が必要です。具体的な手続きに関しては、お近くの海事代理士にお問い合わせください。

 船員を派遣しようとする場合には、船員派遣事業について国土交通大臣の許可が必要です。(船員職業安定法第55条)
 なお国土交通大臣の許可を得ずに船員派遣事業を行なった場合は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。(船員職業安定法第112条)

 船員派遣を行う際には、船員就業規則の作成・届出や派遣先事業者との船員派遣契約の締結などが求められます。また派遣元管理台帳の作成(船員職業安定法第77条)を始めとして、様々なルールや遵守すべき事項が定められています。
 船員派遣事業は許可取得後においても、派遣元事業者、派遣先事業者共に準備や遵守すべき事項が多いものとなっています。ご不明な点などございましたらお近くの海事代理士へご相談ください。

 派遣先事業者においては、派遣先責任者の選任(船員職業安定法第85条)、派遣先管理台帳の作成(同法第86条)を始めとして、様々なルールや遵守すべき事項が定められています。
 また同一業務に対する船員派遣を受入れ可能な期間についても法令の定めがあります。(同法第81条)

 船長を派遣することや、当該船舶へ船長以下全員を派遣することについては、特段禁止されていません。ただし派遣先での指揮命令系統などに留意する点があります。ご不明な点はお近くの海事代理士へご相談ください。

 船舶管理会社への船員の派遣は可能ですが、派遣船員を受入れ可能な船舶管理会社の要件が定められています。ご不明な点はお近くの海事代理士へご相談ください。

 派遣船員に対する労災保険を含む社会保険は、派遣元事業者にて加入しています。

 派遣された船員の雇入の届出は、派遣先事業者(派遣先の船舶)にて行います。雇入の届出時には船員派遣事業許可書や船員派遣契約書の提示が求められます。

 派遣船員は、船員派遣事業者(派遣元事業者)と雇用関係を結びます。その後派遣元事業者と派遣先事業者との間で締結された、船員派遣契約書に基づいて派遣先の船舶で就労します。
 賃金の支払い、船員保険など社会保険への加入は派遣元事業者が行うことになります。

その他

 日本籍船の自航船または日本籍船を所有することが出来る者が借入れた船舶のうち、以下の船舶は船員法が適用されません。
 また、これらの船舶の所有者および乗組員にも船員法は適用されません。

  1. 総トン数5トン未満の船舶
  2. 湖、川又は港のみを航行する船舶
  3. 船員法第1条第2項第3号の漁船の範囲を定める政令に定めのある総トン数30トン未満の漁船
  4. 船舶職員及び小型船舶操縦者法第2条第4項に規定する小型船舶であって、スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボートその他のその航海の目的、期間及び態様、運航体制等からみて船員労働の特殊性が認められない船舶として国土交通省令の定めるもの

→詳しくはこちら

  • 船舶国籍証書又は国土交通省令の定める証書
  • 海員名簿
  • 航海日誌
  • 旅客名簿
  • 積荷に関する書類
  • 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二十六条第三項に規定する証明書

 船員法第18条で定める船内備置の書類は上記のとおりですが、この外にも、船舶の種類、用途、総トン数、航行区域などにより定められた多数の書類を船内に備え置かなくてはなりません。→詳しくは海事代理士にお問い合わせください。

 船舶の航行区域、航路その他の航海の期間及び態様に係る事項を勘案して国土交通省令で定める船舶の区分に応じて1年以下の範囲内で国土交通省令で定められた期間をいい、1年、9か月、6か月、3か月、1か月の5通りの期間があります。
 船舶所有者が就業規則その他これに準ずるものにより当該期間の範囲内において法令と異なる期間を定めた場合又は労働協約により1年以下の範囲内において法令と異なる期間が定められた場合には、それぞれその定められた期間となります。→詳しくは海事代理士にお問い合わせください。

 1日当たりの労働時間は、職務の別にかかわらず一律に8時間以内、労使協定がある場合は14時間以内となっています。

 1週間において少なくとも1日以上の休日を与えなければなりません。

 船員の労働時間が1週間において40時間を超える場合その超える時間(当該週間において少なくとも一日の休日が与えられない場合にあっては、その超える時間が8時間を超える時間。)において作業に従事すること又は船員に1週間において少なくとも1日の休日を与えることができない場合に、その休日を与えられないことに対する補償としての休日のことです。→詳しくは海事代理士にお問い合わせください。

 船員が同一の事業に属する船舶において初めて6か月間連続して勤務に従事したときは、その6か月の経過後1年以内にその船員に船員法で定められた規定による日数の有給休暇を与えなければなりません。
 その日数は船舶の航行区域により異なるため、詳しくは海事代理士にお問い合わせください。

 労使による合意の下、協定により補償休日労働が認められている場合は労働日とすることができます。

 短期雇用の場合でも船員保険に加入しなければなりません。
 また、雇入契約の届出が必要になります。 →詳しくは海事代理士にお問い合わせください。

 船員法に定められた労働条件が守られているか、船員の安全で快適な労働環境が整備されているかをチェックされます。
 事業所監査では、過重労働ではないか、時間外手当等を含め適正な賃金が支払われているかなどを調べるために各種帳簿の提出を求められます。
 訪船監査では、船内備置書類、船内の衛生状況等の監査となりますが、定員不足の船舶については、即時定員補充の命令が出され、是正命令に従わない船舶については、即刻航行停止命令を課されますので注意してください。

 役員報酬が、船員としての労働に対する対価として支払われている場合は船員法の適用となります。