運輸安全マネジメント
運輸安全マネジメントとは
旅客や貨物の輸送における安全の確保は、運輸事業の根幹を成すものです。
利用者に信頼される安全な輸送サービスの実現のため、バス・トラック、鉄道、航空そして海運の各モードの運輸事業者は、経営トップが率先して安全性維持向上への取組みを主導し、社内に安全意識を浸透させるとともに、適宜見直しを図りつつ、計画的に安全性の向上を図ることとされています。
この一連の行動を、「運輸安全マネジメント」といいます。
運輸安全マネジメントの対象事業者について
海運モードにおいて、以下の事業者はそれぞれの事業規模に応じ適切な運輸安全マネジメント体制を構築しなければならないこととされています。
- 海上運送法に基づき許可を受け、または届出を行うすべての船舶運航事業者
- 内航海運業法に基づき登録を受けた内航海運業者
- 船舶の貸渡のみを業とする内航海運業者および届出内航事業者は、対象から除外。
運輸安全マネジメントの実施について
- 対象事業者は、独自に安全管理規程を策定し、安全方針を定めます。
- 経営トップの中から安全統括管理者を選任するほか、運航管理者その他の安全管理要員を適切に配置し、具体的な数値目標等を示した安全重点施策を設け、目標達成のための行動を決定・実行します。
- 安全管理規程は、運航基準や作業基準、事故処理基準や地震防災対策基準など事業ごとに必要となる事項を規定し、使用船舶及び事業所において誰もが閲覧できるように備えおくとともに、設定または改訂時には、運輸局に届け出なければなりません。(「安全管理規程とは」の項参照)
- 安全統括管理者、運航管理者となるには、それぞれ経歴等要件が定められています。
(「安全統括管理者」「運航管理者」の項参照)
PDCAサイクルとは
構築した管理体制の下では、常に見直しと対策を繰り返すことが求められており、その流れはPDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実行)、Check(点検)、Act(改善))と呼ばれます。
PDCAサイクルとは、
- 安全方針に沿って計画を策定し(Plan)
- 安全管理規程に従い、あらかじめ設けた安全重点施策の目標を達成すべく実行(Do)
- 定期的に現場から収集した情報などから、安全管理体制に不具合や問題点がないか等、上記目標達成の程度や成果を点検(Check)
- 必要な改善を実施(Act)
- 4.の改善(Act)を踏まえて、また新たな計画を策定(Plan) ・・・
を、右図のように円形や螺旋のように繰り返すことで、安全性の向上を図ります。
これら一連の流れを、PDCAサイクルまたはPDCAスパイラル(アップ)といいます。
PDCAサイクルの中で、事業者は自主的に内部監査を行うとともに、対策等必要事項は記録しなければなりません。
なお、運輸当局においては、対象事業者に対し、保安監査とは異なる「安全評価」を実施し、安全性向上につながる助言を行うこととされています。
安全管理規程とは
船舶運航事業者は、輸送の安全確保が最も重要であることを自覚し、絶えず輸送の安全性向上に努めなければなりません。
このため、運輸安全マネジメントの対象となる事業者は、輸送の安全確保のために遵守すべき次の事項を安全管理規程として策定し届出る必要があります。
安全管理規程に定めるべき具体的内容
- 輸送の安全を確保するための事業の運営の方針
- 輸送の安全を確保するための事業の実施及びその管理の体制
- 輸送の安全を確保するための事業の実施及びその管理の方法
- 安全統括管理者の選任及び解任
- 運航管理者の選任及び解任
- 国土交通大臣は、届け出られた安全管理規程について必要な内容が定められていないと認めるときは、当該事業者に対し、その変更を命ずることができます。
- 船舶運航事業者は、輸送の安全の確保に関し、安全統括管理者の意見を尊重しなければならないこととされています。
- 国土交通大臣は、安全統括管理者又は運航管理者がその職務を怠った場合で、一定の事由に該当すると認めるときは、船舶運航事業者に対し、当該安全統括管理者又は運航管理者の解任を命ずることができます。
安全統括管理者
安全統括管理者とは、輸送の安全に関する業務を統括管理する最高責任者であり、事業運営上の重要な決定に参画し、企業経営上管理的地位にある者(経営トップ)の中から、以下のいずれかの要件に該当する者を選任します。
① | 事業の安全に関する業務の経験の期間が通算して3年以上である者
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② | 地方運輸局長が上記と同等以上の能力を有すると認めた者
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運航管理者
運航管理者とは、輸送の安全に関する業務のうち、運航管理業務を統括管理する者で、以下のいずれかの要件を満たす者を選任します。
① | 事業に使用する船舶のうち最大のものと同等以上の総トン数を有する船舶に船長として3年又は甲板部の職員として5年以上乗り組んだ経験を有する者 |
② | 船舶の運航の管理を行おうとする事業と同等以上の規模の事業における船舶の運航の管理に関し3年以上の実務の経験を有する者 |
③ | 船舶職員及び小型船舶操縦者法の規定により、事業に使用する船舶に船長として乗り組むことができる資格を有する者(※総トン数100トン未満の船舶1隻のみを使用して事業を営む場合に限る) |
④ | 地方運輸局長が上記と同等以上の能力を有すると認めた者(※詳細については、最寄りの各地方運輸局へ照会のこと) |